メタボリックシンドロームを指摘された方へ

肥満は歯周病を悪化させます。

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に、高血圧症・高血糖・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態であり、日本ではウエスト男性85cm以上、女性90cm以上が基準とされています。現在、メタボリックシンドロームは肥満によって脂肪細胞がたまることがわかっています。そしてこの蓄積も、実は歯周病を悪化させる危険因子となることがわかってきました。

脂肪細胞は、エネルギーを貯蔵するだけでなく、組織に炎症を起こす作用を持つ物質が作られていることがわかっていて、歯周病のように歯周組織に炎症が起こる病気にも影響を与えてさらに悪化させるのです。

肥満とは、中性脂肪が脂肪組織に過剰に蓄積された状態と定義されます。

肥満は、エネルギーの摂取がその消費に対し過剰な状態が続くことによって生じます。食事と運動のバランスが悪く、食事の量に対して運動量が少ないと、余ったエネルギーは脂肪となって体内に蓄えられます。しかし、エネルギーは運動だけではなく、基礎代謝として心臓を動かしたり、呼吸をするのに必要です。基礎代謝は年齢とともに低下していくので、運動量や食事の量を調整してバランスを取り、健康体重を維持することが大切です。

肥満と歯周病を関連付けるメカニズムは研究中のようですが、肥満になると、糖尿病や高血圧、高脂血症、動脈硬化、心疾患などになりやすくなると言われています。このうちの糖尿病へ及ぼす影響は特に強いようです。糖尿病が歯周病を増悪させることは前述のとおりですので、肥満→糖尿病→歯周病と影響を与えているのではないかと考えられています。

現段階での考えられているメカニズムについて述べていきます。歯周炎によって歯の周りの各所でTNF-αという物質が発現していることはわかっています。この物質が歯槽骨と呼ばれる歯を支えている骨の吸収を引き起こしています。TNF-αは太っている人の脂肪組織からも多量に分泌されるので、歯槽骨の吸収を促進する可能性があるのではないと考えられているのです。

歯周病と脂肪の関連はまだまだ不明な点がおおいのですが、食に関連した歯科医院での助言や指導が、患者さんの肥満解消のモチベーションにつながればと思います。