口の中にできる癌(がん)について

癌(がん)という病気は、胃癌、肺癌、大腸癌という病名があるように、体の様々な場所にできる病気ですが、口の中の粘膜や歯肉にも癌はできます。これらは歯肉癌とよばれ、大部分は口の中の粘膜を覆っている重層扁平上皮という上皮が基となって発生します。

歯肉癌は下の奥歯の周りの歯肉や粘膜に発生することが多く、50~60歳の男性に多く発症すると言われています。原因は適合の悪い入れ歯や、欠けたりして尖った歯によって繰り返し歯肉や粘膜が傷つけられたりすることで癌になる場合が多く、喫煙や飲酒も原因の一つと言われています。

歯肉癌は癌全体の約1%前後であり、年々患者数は増加傾向にあります。初期の症状としては、歯肉や粘膜のはれ、ただれ、潰瘍、歯の動揺、入れ歯が合わなくなる、触ると容易に出血する、触ると硬いなどがあげられます。初期の歯肉癌は痛みや自覚症状が少なく、他の口の中の病気と区別することが難しいとされています。見た目としては、歯肉や粘膜にブツブツとした膨らみが見られたり、暗赤色の潰瘍が見られたりします。

進行すると顎の骨が吸収したり、強い痛みがでたり、唇の感覚に異常を感じたり、口が開きづらくなったりします。また、これらの症状が現れた場合、頸部リンパ節や他の臓器への転移も考えられます。

治療方法としては、他の癌と同様に、癌になってしまった部分を切除して取り除く外科的療法、薬や点滴による化学療法、癌になった部分に特殊な放射線をあてて治す放射線療法の単独もしくは併用があげられますが、病変部の外科的切除が主体となります。切除によって失われた顎の骨や皮膚に関しては、体の別の部分から皮膚や筋肉、骨を移植する再建術とよばれる手術や特殊な入れ歯を作ることで補うことになります。治療は大学病院や総合病院の口腔外科という専門の医療機関で行います。

初期の歯肉癌は口内炎と類似していることがあり、「口内炎ならそのうち自然に治るだろう」と自分で勝手に判断し、歯肉癌が進行してしまうこともあるため注意が必要です。

歯肉癌は発症すると自然に治ることはないため、口の中の口内炎のようなものが一週間以上経っても無くならない、だんだん大きくなっている、出血する、同時に3カ所以上できている等の症状が見られる場合はすぐに歯科を受診し、適切な検査や診断、治療をしてもらうことが重要です。

また、歯を抜いたあとの傷口がなかなか治らない、抗菌薬を長い期間服用しても口の中の異常な部分の変化が見られない場合も歯肉癌の可能性が疑われるため、専門の医療機関で詳しい検査を受ける必要があります。

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